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特別対談:「最初、LGBT支援に反対でした」
- PRIDE指標で九州唯一ゴールド認定されたペンシルが考える、企業がLGBT施策に取り組むべきシンプルな理由

特別対談

 

 

PRIDE指標(※)において、名だたる大手企業と肩を並べて最上位の “ゴールド” を受賞した九州の中小企業がある。しかも、LGBT当事者を含む消費者にサービスや商品を提供するBtoC企業ではなく、企業間で取引を行うBtoB企業だ。関東などに比べ、まだまだLGBTの取り組みが遅れていると言われる九州において、なぜペンシルがLGBT当事者への支援施策を開始したのか ——。

ペンシル代表 倉橋美佳と、週1回ペンシルに出社してダイバーシティ経営の推進をサポートしながらLGBT当事者として九州レインボープライドの代表を務める三浦暢久(あなたののぶゑ)がそれぞれの思いを語る。

※任意団体 work with Prideが策定した日本で初めてとなるLGBTを含むセクシャルマイノリティ当事者への企業の取り組みの評価指標。初年度となる2016年は、ゴールドに53社、シルバーに20社、ブロンズに6社が認定された。

九州レインボープライド 代表 三浦 暢久(あなたののぶゑ)

株式会社ペンシル 代表取締役社長 倉橋 美佳

 

 

LGBT支援が目的ではない

のぶゑ

三浦:

 

 

ペンシルは九州に本社を置く企業として唯一PRIDE指標で最上位の “ゴールド” を受賞したけど、

受賞企業をみたらほとんどが東京の大手企業。福岡を含め、地方の企業は数える程度で、

やはり地方では根付かせるのは難しいなと思った反面、ペンシルのような地方の、

しかも中小企業が受賞したというのはすごく励みになりましたよ。

倉橋:

LGBT当事者の方にそういってもらえるのは、私たちにとっても励みになります。でも、ペンシルが2015年にはじめて「九州レインボープライド」に協賛したとき、実は、私、反対したんです。

 

三浦:

えっ、そうだったの?

倉橋:

はい。それまでペンシルはイベントへの協賛はあまりやっていなかったので、いきなりLGBT関連のイベントを支援するのは唐突過ぎると思ったんですよね。それに、私自身、全くLGBTの知識がなく、単純に知らない道を歩くのが恐かったんです。

三浦:

たとえ知っていたとしても、「LGBT支援はやらなくても別に困らないから」って言う人も多い。どうして協賛しようって考えが変わったの?

 

倉橋:

LGBT支援をすることが目的ではなくて、ペンシルが目指すのは多様性を受容し、それを活用して会社をより発展させていくこと。そんな「多様性」という大きな枠で考えたら、性別や年齢、国籍などと一緒に性的指向や性自認が入るのは当たり前だろうって思ったんです。つまり、ダイバーシティ経営の一環としてLGBT当事者への取り組みを開始したということですね。

三浦:

私はペンシルで「ダイバーシティ・モチベーター」という役職をもらって色々と活動してるけど、これに「LGBT」という言葉が入ってないのがそれを物語ってるよね。LGBT支援だけを推進したいんじゃなくて、あくまでもダイバーシティという大枠で捉えてる。そして、その推進を担うモチベーターがたまたまLGBT当事者だったっていうだけ。

倉橋:

そうですね。人は一人ひとり違うにも関わらず、女性だからこうしないとだめとか、特定のカテゴリーに縛られるのはいやだと思っていて、私自身もそうだし、会社がそうなるのもいやだったんです。それもあって、2015年に制定した行動規範の中には、自分一人で仕事をするのではなく、自分の周りにある多様な色や個性を活用して最良の結果を得るという意味で、「ベタ塗り禁止」という規範も入れたくらいです。

三浦:

言葉のチョイスがペンシルらしい!

「知らない」が生む危険

 

倉橋:

「知らない」のが一番だめですよね。LGBTについて勉強していく中で、きちんと知ったうえでどうあるべきかと考えることが重要で、まず「知る」ことが大事だなと痛感しました。

ペンシル倉橋社長

三浦:

ペンシルも協賛をきっかけにLGBTについて知り、そのうえで企業判断としてLGBTセミナーの開催や福利厚生の見直しなどたくさんの取り組みをしてきたもんね。知ることで正しい評価ができて、適切な制度をつくることができる。そして、その制度を使う人が輝ける環境になっていく。ただの特別扱いだと、間違った結果を生んでしまうってことですね。

倉橋:

そうそう。知った結果、私はこれ好きじゃないと判断するのもOK。知ったことでどう考えるのかを議論するのが大事ですね。

三浦:

ただ、「知る」ことへの近道のような感じで、どうしても数字で考えようとするのは危険。例えば、女性管理職比率を30%にするっていう目標を掲げて、数字にとらわれすぎて評価が曖昧になってしまったり。

 

実は、以前、「LGBT当事者を何人雇ったらLGBTフレンドリーと言えるんですか?」と質問されたことがあって。企業側からしたら数字で考える方がわかりやすいんだと思いますが、雇ったからいいというわけじゃないですよね。カムアウトしてない人だっているし、LGBT当事者かどうかではなく、それぞれの従業員が能力を発揮しやすい職場環境をつくることが重要。

 

私が関わってる企業は幸いそういう考えを持ってる企業も多くて、ペンシルも女性管理職比率が約30%と高いけど、それは女性管理職を増やそうと思ったわけじゃなくて、性別は関係なく働きやすい環境をつくった結果そうなってるだけだよね。

必要なのは人間としての練習

倉橋:

とはいえ、最初、私自身がそうだったように、知識がない状態では何からはじめていいのかわからないという企業の声をよく聞きます。結果、問題に向き合わずに終わってしまう。当初私が感じていたのは、「なにか間違ったことを言ってしまうのでは」という不安でした。

三浦:

特に倉橋さんのような経営者の場合、企業を代表してるわけだし、失敗できない、みたいな。

倉橋:

そうなんです。どんな言葉が差別的かわからないし、誰かを傷つけてしまう可能性があるならいっそのこと黙っとこう、関わらないでおこうという感じ。でも本来は、言うことを言ったうえで、こういう言葉や行動が嫌がられるんだと知見を貯めていけばいいと思うんです。

 

例えば、道徳の授業で習うような「人のものを盗んではだめ」とかも、実際に学校などで生活をする中でなぜだめなのかを学んでいくように、まずはそういう世界に触れて、話を聞いてみることが大事。ときには相手に嫌がられたり、相手を怒らせてしまったりすることがあるかもしれないけど、喜ばれることだってあるかもしれない。言わば、人間としての練習が必要なんだと思います。LGBTに関して言えば、その練習がまだまだ足りないんだろうなと。

三浦:

「社員が声をあげてくれれば、対応するんですけどね」と言われることがあるんけど、言えなくて困ってる人がたくさんいるのが現状。LGBT当事者だけじゃなく、みんな色んな悩みや思いを抱えながら仕事をしてる中で、その悩みを打ち明けることができる環境があるかどうかはすごく大事なことですよね。当事者がいるということを前提にして考えて欲しいんです。じゃないと、声すらあげることができないですから。

倉橋:

ペンシルがLGBT支援を開始して2年くらい経ってるけど、私が把握する限り、カムアウトした人はいないんです。でも、それはそれでいいと思ってる。カムアウトしてもらうことが目的ではなくて、企業としてはパフォーマンスを最大限発揮してもらい、生産性を上げて仕事をしてもらうことが重要。だから、なんだか少し働きやすくなったなと思ってくれたらいい。ちょっとした障壁がとれただけでも全然違うと思うんです。

三浦:

ほんの少しの配慮でも、会社が寄り添ってくれる姿勢がみえるだけで帰属意識は高まるよね。もっと貢献していこうと思う。そのエネルギーはとても大事。私自身がそうだったんだけど、カムアウトできずに、常にバレないように隠し続けないといけなかった30才以前の私と、自分らしく生きることができるようになったいまと比べたらパフォーマンスが全然違うんですよ。

企業がLGBT支援に取り組むべき理由

倉橋:

九州レインボープライドも今年で4年目ですよね。企業の動きになにか変化は感じますか?

三浦:

協賛企業の数も増えてるし、手応えは感じています。ただ、特に大企業はいくら人事担当者が頑張ってもトップの考え方が変わらないと動けないという企業が多いように感じます。そんな中でも、世の中でLGBTという言葉が聞こえるようになってきているので、なんとなく社会や雰囲気が変わり始めてきているという感じですね。もちろん、市民の数の力というのも影響力が大きいと実感しています。だから今後もパレードを続けていってよりみなさんにLGBTのことを身近に感じていただけるように頑張っていこうと思っています。

 

企業がLGBT支援に取り組むのは、従業員の中にいるであろう当事者へのアプローチと考える人が多いけど、将来的な人材確保につながったり、サービス向上にもつながる。“LGBT市場”という言葉もあるけど、LGBT当事者が商品を購入したり、サービスを受けることができるようになったら業績向上にもつながる。それを金の亡者と言うLGBT当事者がいるのも事実だけど、企業は営利団体であってマネタイズをしないといけない。それに、LGBT市場を狙って新しい商品やサービスを開発するわけではなくて、いまあるものを当事者がなんの不自由なく購入、利用できるようにするということ。企業が取り組むことで間口が広がり、生きやすい環境になるんです。

倉橋:

BtoC企業はわかりやすいけど、ペンシルのようなBtoB企業では成果が見えにくいと言われていますよね。私たちも従業員のためにLGBT支援を開始したんですが、ある日、パートナー企業の担当者がカムアウトしてくださったんです。ペンシルを信頼していただいての発言だったと思いますし、とても嬉しかったのを覚えています。従業員だけでなく、クライアントやパートナーなどの取引先にも影響することなんだって初めて実感しました。

三浦:

アメリカなどでは、取り引きを行う際の基準に「LGBT施策を実施してるかどうか」というチェック項目をいれることが増えているそうなので、BtoB企業でも関係のない話ではなくなってきています。

 

それに、日本では2020年に東京オリンピックが開催されるけど、オリンピック憲章に「性的指向による差別の禁止」が明記されていることもあって、オリンピックのスポンサーや物品・サービス調達先企業ではLGBTに関する対応を必ず実施していかなければならないんです。親会社だけじゃなくて子会社などの関連会社も対象ですし、これをきっかけに、ここ1〜2年くらいで爆発的に広がるだろうとは言われてますね。

倉橋:

私は博覧会が大好きなんですけど、福岡の観光名所である福岡タワーは1989年に開催されたアジア太平洋博覧会にあわせて建設されたんです。あのエリアは博覧会にあわせてインターネット環境が整備されて、TV局ができたり、オフィスができたりしていったんですね。2000年のインターネット博覧会もそう。それまでインターネットと言えば、オタクのものっていうイメージで、企業でもインターネットにつながっている1台の端末を全員で共有するっていうのが当たり前だったのに、博覧会のおかげで理解が深まった。それと同じで、オリンピック自体はひとつのイベントだけど、それをきっかけに変わることはたくさんあると思ってます。

三浦:

オランダでは2001年には世界で初めて同性婚が認められたんですね。そして、その時代に生まれた子どもたちはちょうど高校生くらいになってるわけだけど、その子たちにしたら、昔は異性間でしか結婚できなかったなんて意味がわからないとか、好きな人と結婚できない時代があったの?という感じで、過去の歴史になってるみたい。

倉橋:

LGBT支援の取り組みに関しては、優秀な人材の確保や離脱防止、商品やサービスの向上、ブランドイメージアップとか、企業にとってメリットしかないと思うんです。きちんと知ったうえで適切に発信していけば、少なくともマイナスになることはない。

三浦:

個人はともかく、メリットというのは会社を動かすうえで考えざるを得ないないポイントですよね。

倉橋:

LGBT当事者向けに新しい制度やサービスをつくらないといけないのではと難しく考えてしまう人もいるけど、大事なことはいまある制度をLGBT当事者でもなんら変わりなく受けることができるようにしたり、既存の商品やサービスをLGBT当事者である消費者が躊躇なく購入したり利用したりできる環境を整備することだと考えを変えると、取り組み開始へのハードルは下がるのではと思っています。

三浦:

LGBT当事者は特別扱いを望んでるわけじゃないですもんね。昔は珍しかったインターネットをいまでは誰もが当たり前に使っているように、LGBT自体もいずれ当たり前になっていく。そうならないと意味がないし、私たちも企業を巻き込みながらそれを目指してこれからも活動を続けていきます。

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